INTERVIEW 劇場版『渋谷×死滅』オフィシャルインタビュー 夏油 傑役:櫻井孝宏
―偽夏油の姿で初めて五条の前に現れますが、五条にとっては自分が殺したはずの親友との再会となります。このシーンを演じる上で意識されたポイントなどありますでしょうか?
櫻井:五条が違和感を持つ、不審感、不気味さとか、迷わせるような瞬間にしたいなと思って表現しました。獄門疆に捕えることが目的であってそのために膨大な時間を要して準備をしてきたので。ただ、偽夏油にしてみれば確実に封じ込められるという、何か確信はあったと思うので、ああいう意地悪な物言いをするんですけど、その辺は偽夏油として会話を楽しみたいなという、役の表現もそうなんですけど、私自身が少し楽しんじゃったところがあるかなと思います。
―「渋谷事変」で、真人・漏瑚などこれまで行動を共にしてきた呪霊たちが物語から退場していきますが、櫻井さんの中で呪霊への印象の変化はありますでしょうか?
櫻井:人間を恨み、憎悪するような関係性で描かれていて、夏油はそこを利用する魂胆で呪霊たちと関わっていくんですけど、漏瑚にしても真人にしても最期は泣いたりするんですよね。悲しんだり怖がったり怯えたり。それが残りますね。怒りや憎しみの感情で動いていると思ったら、根っこには深い悲しみがあるんだなと。そういう姿を見るとやはり、彼らが悪とは言い切れないんじゃないかなって。真人が「だって俺はお前らから生まれたんだから」って言ってましたが、その「お前ら」が人間を指しているのなら、本当に怖いのはどっちなんだろうと思わされました。
―高専時代、呪詛師時代、そして加茂憲倫、様々な夏油を演じてこられましたが、櫻井さんにとって夏油とはどんな存在でしょうか?
櫻井:高専・呪詛師時代くらいまではアニメ化が決まったタイミングもあり、丁寧に彼を追いかけたので、彼の気持ちがわかるという姿勢でいるのですが、他の道はなかったのか、あったんじゃないかという迷いも含めて、彼が五条と袂を分かつ時に告げた「生き方は決めた」という言葉がすごく印象に残っています。覚悟じゃないんですよね。覚悟はもうとうに決まっていて、生き方を決めた。その生き方が悟が思っているものじゃないのはもう明白だし、もしそれで俺を殺したいんだったら殺せばいいよ、それには意義も意味もあるからねっていう、そういう突きつけ方をした彼の気持ちを悪いものにしたくないと思って収録に臨んでいました。加茂憲倫のあたりからはちょっと難しくて、うまく言えませんがキャラクターのメカニックを考えて表現していました。よくある説明ですけど数学的とか音楽的な取り組みって感じの方法です。声を音として操縦するようなやり方ですね。表現する人間からしてみるとまた違った面白さはあるんですけど、演技としては外れたやり方で難しいですね。「懐玉・玉折」の夏油 傑は楽しかった。楽しいと面白いの段差を一つのキャラクターでじっくり味わっています。
―一つのキャラクターで3つの表現をすることへの難しさはありますでしょうか?
櫻井:そこに固執しちゃうと「すごいことをやらなきゃいけない」という良くない発想に傾いちゃうので。違和感や引っ掛かりやズレを塗り重ねていって、それを観る人たちの記憶とイメージを利用するようなやり方はないものかと模索しました。どんな形でもいいから、自分が考え出せる範囲でやれることはやろうとアプローチしていました。
